TOPICS:第22回JTF翻訳祭

Facebook 近況より転載

第22回JTF(日本翻訳連盟)翻訳祭をのぞいてきました。

4つのセッションに参加してみましたが、傾向は「効率化」「自動化」「低価格化」ですね。4つの内3つまでは完全にそのベクトルでした。とくにシステム信奉というか、とにかく効率よく、という考え方が業界で非常に強いんだなと感じました。なべてスピード重視の世の中ですから、当たり前といえば当たり前ですが。
驚きなのが(または怖いのが)、…そんな中、「価格×納期=品質」ということをほとんど誰も言わなかったということ。顧客側からは(当然なのかもしれませんが)、翻訳会社、翻訳者選定の重要要素は「価格とスピード」と言い切られていたことです。そして「現状の翻訳業界には満足できていない、なぜなら品質が良くないから」と…。この業界、まだまだ原始的な段階にいるんだなと実感。翻訳業者側が翻訳という価値の啓蒙を怠ってきた証左かもしれません。業者と顧客の距離が遠いんです、たぶん。
正直、他の業界に比べて粗利感がかなり高いなというような、業界、業者側の感覚の問題があるとも思いますが、翻訳という作業が軽~く考えられているとすれば、それは早急に修正しないと、翻訳者もエージェントも顧客も、翻訳にかかわった人全員がそろって不幸になってしまいます。

のこる1つのセッションでは、”Good services do have a cost”とか、”Try to buy what you need rather than what looks cheap”なんてことがテーマだったり、クオリティとは何かを内容と状況により都度判断、定義してコンセンサスを得よう、とか、まあそうだよねー、的な内容の話でほっとしましたが(英語でのセッションだったので、自分の英語力不足で良い方に曲解してなければいいのですが…)。しかしそこでも、粗利感の問題は語られませんでしたね。つまり、エージェントのマージン、高すぎないの?という…。

それにしてもシステムによる効率化への欲求は業界全体ですさまじいものがありますね。
現状のコンピュータを使った翻訳の自動化や効率化というのは、結局のところ、事例をできるだけかき集めて差分を抽出することで誤謬を少なくしていく、というチカラワザであり、本当に知恵を持った人工知能が出現しない限りは、デジタルの外見をしたアナログ技術にすぎないんじゃないかとも思えるのですが、とにかく業界の流れとしては、いかにシステムを活用して効率化を図るかに大きく舵を切っているようです。30年後、「あの黎明期はほんとうにたいへんで…」なんて言われているのがいまこの時なのかも知れませんが。
開発されたシステム自体はかなり考え抜かれ、作りこまれているのですが、じゃあそこで誰が作業するの、というところで話が終わってしまう。「こうすれば5人のすぐれたヘブライ語翻訳者が時間を短縮して翻訳から校正までオンライン上で効率的に作業を完結できます」とは言うけれど、そのすぐれた5人はどこにいるのか、どこでどう翻訳を生業として成り立たせ、そのウデを磨いていくのか、というのはまたまったく別の話で。その解決策ばかりは簡単に効率化というわけにはいきません。本当に大切なのは、人的リソースについての認識だと思います。もちろん効率化、システム化は大切なんですけど。

この業界に営業としてかかわるのであれば、そのあたりの価値観を正しいもの(と言ってしまうのが傲慢であれば、現実的なもの)に置換してゆくための宣伝をしていかないと、なんだかキケンな香りが漂うなあ、というのが率直な感想かな…。


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